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2005/07/07

言葉は、考えを連れてくる

中学生の主張コンクールの作文の授業が始まります。代表者は各学年一人ですが、文章を書く良い機会ですので是非じっくり取り組んでください。

                  ◆

授業では作文の書き方の最初の部分を説明しました。作文を書くときには、大きく4つのステップがあります。

1 書くためのアイディアを出して、材料を集める(取材、調査)
2 必要のない材料はなにか、どの順番で書くかを考える(構成)
3 実際に書く(執筆)
4 読み直す(推敲)

作文が書けないという諸君は、主にこの1と2のステップをやらずに、いきなり3から始めて「先生、書けません」と助けを求めてくるのである。しかし、私に言わせれば書けなくて当たり前である。
プロの小説家であっても新聞記者であっても、書くためにはきちんと取材や調査をするのである。その上で、どう構成したら読者に伝わりやすいか、誤解なく伝わるかと構成して、書き始めるのである。*1

だからまず、アイディアを出すことが大事なのである。が、その作文のアイディアだしの時に、ホゲーッと考えている生徒がいた。見ていると爪の掃除をして、それが終わるとシャーペンを分解して掃除をしている。かなり綺麗好きなのかもしれない。しかし、そんなんでアイディアは出てこない。*2  そこでこんな説明した。

「アイディアは、ホゲーッと考えていても出てこないぞ。とにかく書くことだ。鉛筆を指先で回していても駄目。ノートに心に思いつく言葉をとにかく文字にして書くことが大事だ。文字が、君の考えを引っ張ってくる。
もし、何も思いつくことがなかったら、聞こえてくる音、目に見えるものでも良い。とにかく紙に書き続けること。そうすると、文字がリンクして頭から何かを引っ張ってくる。書くは考えるだ」

文字を書くことで考えは生まれ、考えはまとまるのである。

               ◆

もう一つ、作文のタイトルについても触れました。作文のタイトルは、その作文の顔であり、小説家などはここに小説を書くエネルギーの半分を使うと言います。

今回は、平成15年度の少年の主張東京都大会発表文集に収録された、優秀作品のタイトルから考えてみました。

a.おやじが泣いた日
b.「思いやり」のある社会に
c.障害という心の壁を越えて
d.拒食症
e.先生とは・・・?

この5つの中で、どのタイトルの作品を読んでみたいか?と君たちに手を挙げて貰ったところ、圧倒的にaが一番でした。なぜなのでしょうか? それは、タイトルは「分かりすぎてはいけない。分からなすぎてもいけない」というルールに適っているからでしょう。*3 以下、それぞれのタイトルの特徴を説明してみます。

aは、おやじがなぜ泣いたのかが分からない。ただ、おやじが泣いたことだけはわかる。だから、読者はなぜ泣いたのかを知りたくなってしまいます。これが、「おやじが机に足をぶつけて泣いた日」では、誰も読まないでしょう。

bは、「  」を使っています。「  」は普通は会話文に使います。ですが、他にも1)その言葉を目立たせたいとき、2)その言葉を特別な意味で使いたいときに使うことができます。ただ、この2つの使い方は中・上級者向きで、下手に使うとみっともないタイトルになります。

cは、私は良いタイトルとは思えません。なぜなら、このタイトルを読んだだけで作文で言いたいことが分かってしまうからです。障害は心の壁であり、それを乗り越えればよいという内容です。そして、「心の壁」という言い方が陳腐(ちんぷ)です。私はタイトルだけから判断することになれば、この作品は読みません。

dは、直球ですね。この作文を書いた生徒は、拒食症が中心テーマで、そこから外に出ることなく書いたのでしょう。だから、このテーマに興味のある人には非常に良いタイトルですが、逆に言えば興味のない人にはまったく読まれません。

eは、避けたい表現方法の固まりです。それは、「とは」「・・・」「?」です。「とは」は、「について」と同じぐらいタイトルに使わないで欲しい書き方です。対象を絞っているようでいて、絞り切れていません。「・・・」は中途半端ですし、「?」もタイトルとしては品がないように感じます。ま、eの場合使ってはいけない方法を3つも使っているので、逆にインパクトがあるとも言えますが、インパクトだけなら品は別にしても「先生?」のほうがもっとインパクトがあると思いませんか?

作文を書き終わったら、タイトルを十分に考えて下さい。

*1 もちろん、今はワープロのお陰で書き終えてから構成を考え直すと言うことも簡単にできるようになったため、そうやって書くことも多いが。
*2 夏目漱石の『吾輩は猫である』には、筆が進まず鼻毛を抜いて原稿用紙に並べる漱石の姿が描かれていたが、それは小説の話である。
*3 小論文は別です。

(教科通信 志学 NO9より)

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コメント

塾長さん、はじめまして。
トラックバックありがとうございます。

一昨年は学芸大学大学院に通い国分寺あたりで飲んでいた私です。さらにその前の年は、一橋学園の放送大学学習センターでビデオを見ていました。また、三歳のころは萩山に住んでいました。

生徒さん達に、私のブログを紹介していただきましてありがとうございます。作文の指導はなかなか難しく、いろいろ工夫を重ねながらやっております。

http://homepage.mac.com/ikedaosamu/kokugo/sakubunn/hou-to-write-taikensakubun.html

にもう少し詳しく指導したものがあります。今年は9月に指導する予定なので、今回は簡単に指導してみました。良かったらご覧下さい。

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