第10回 ディベート甲子園
やってしまった。
携帯電話を紛失してしまった。おそらく、新幹線の中だろう。
名古屋に着いてからDoCoMoに行って、電話の機能を停止し、
名古屋駅の忘れ物センターに電話をして探して貰っているが、見つかっていない。
ああ、やってしまった。
大事なときに、必要なときに、こうして無くしてしまう。
いつもこんなことをしている気がする。
そして、誰かのお世話になってなんとか乗り越えてきている。
今は、奥さんに助けて貰っていることが多いなあ。すまないなあ。
明日からは、ディベート甲子園の本番。
携帯電話の紛失にもめげず、冷静なジャッジを行おう。
んな、わけで私の携帯電話は不通です。
出てこないので、みなさんのメモリーも飛んでいます。
すみません、連絡がとりにくくなります。
◆
大会初日は、名古屋の金城学院大学で行われた。
立派な講堂で開会式を行う。例の橋下弁護士も会場に来ていたが、いやー、細いねえ。やっぱりテレビでは太って見える。なにやらアドヴァイスのようなことをしていたが。
この日は、私はジャッジは一試合のみ。
高校の試合であった。
高校の論題は【日本は炭素税を導入すべきである。是か非か】である。4年前に中学校で準優勝したときの中学校論題【日本は環境税を導入すべきである。是か非か】に議論の枠組みが似ている。
ちょっと懐かしく思いながらジャッジに取り組む。
いよいよ大会が始まったのだ。
◆
二日目は5試合ある。
私はジャッジを4試合行い、1試合は見ていた。
ジャッジは自分の地区、つまり私の場合は関東甲信越地区から出場している学校のジャッジをすることはできない。逆に言えば、普段見ることのできない地区のジャッジをすることができる。
印象に残ったのは、愛知の滝中学校と福島の会津高校である。
滝中学校が否定側になったとき、否定側の第一反駁の戦い方が見事だった。論題は【日本はレジ袋税を導入すべきである。是か非か】
「否定側は、肯定側のメリットの発生過程を認めます。しかし、重要性はありません。三点にわたって反駁します。一点目・・・・」
と始めた。
中学校の試合フォーマットが変わり、立論が6分から4分へ、反駁が4分から3分へと短縮されたので、反駁のポイントを絞ることが今まで以上に大事になる。こうして争点を絞ることは、争点が合っているときにはいいが、ずれてしまうと悲惨なことになる。だが、見事に合っているし、絞った分だけ時間に余裕が出るのでゆったりとしたスピードでスピーチできていた。
会津高校は、昨年の会津若松二中の生徒が進学して、出場してきた。東北大会から前評判が高く、どんな試合をするのかと楽しみにしていたのだが、まあいい試合だった。メンバーが揃わず二人での大会参加であったが、この二人組の息が良い。力強いスピーチをする一人と、木訥にしかしポイントを外さないスピーチであった。
特に、肯定側の第二反駁であった。否定側の第二反駁で
「鉄鋼業が今利益が上がっているのは、中国の特需が原因であり、基本的には業界は値下の国際競争に耐えられなくなっている」
という反駁に対して、
「中国の特需がある今なら、炭素税を導入しても業界は耐えられる。今導入して、環境技術を活かして世界をリードしていくのだ」
のような反駁をしたのだ。ジャッジの中からもうなり声が出た。
この日は、決勝戦に残る二チームを決めるまで行った。
「ワシワシワシワシ・・・」
会場の金城学院大学には蝉が多く、試合の最中にも鳴き続けていた。
なんか非常に切なかった。七年間土の中にいて一週間の命を鳴き続ける蝉と、半年間準備を重ねて一試合ずつ勝ち上がるために懸命にスピーチをする子どもたち。勝手にその姿を重ねてしまっていた。
そして、決勝進出の学校が決まった。
もちろん、勝ち残れない学校もたくさんある。
大会は、ほとんどの負けの学校と一つの勝ちの学校によって成立しているのだから。
だが、ここに至までに沢山の出会いと沢山の学び、そしてそれを支えてくれるスタッフ、仲間、指導者を得たはずで、その中で
(あ、私でもできる)
と小さな自信を積み重ねていくことができたのではないかと思う。
◆
決勝当日。今年は、愛知地球博の「ロータリー館」をお借りしてやることになる。
建物は綺麗で心地よいが、ちょっと小さいかなあと思わせた。
私は高校の決勝ジャッジになっていた。
近畿から中学校と高校の両方共に決勝進出の学校が出て、近畿の支部長さんがジャッジをすることができなくなってしまったので、常任理事の私に役割が回ってきた。名誉なことである。
中学の決勝は、滝中学校と神戸大学付属中学校。
私は観客席で見ていたのだが、横にいたのが松本茂先生。これが面白い。
副音声でディベートの解説を聞いているように、細かいつっこみを入れる。
これを部屋を変えてテレビで中継したら面白いだろうなあと思った。
中学校の決勝後、いよいよ高校の決勝である。
滋賀県立膳所高校と長崎の青雲高校である。
中学校の決勝の時もそうであったが、高校の決勝はさらに会場は満席。
すごい熱気であった。
肯定側の地球環境保護の議論と、否定側の鉄鋼業界の衰退ががっぷりと組み合った。
大会の判定も3対2と割れる試合であった。
気持ちの良い試合を見せて貰った。
中学校は滝中が、高校は膳所高校が優勝した。
閉会式では、表彰の他にディベート甲子園のOBOG会によるちょっとした企画があった。OBから現役へのメッセージと、模擬ディベートである。論題は、【ドラエモンは22世紀に帰るべきである】。これは非常に良かった。M1グランプリに出るといいなあ。それぐらい面白かった。お笑いに新しくディベート漫才というジャンルを作ってもいいぐらいだ。
◆
第10回大会ということで、東京を離れ名古屋に行って大会を行ったが、いい大会になった。大会を回す連盟のスタッフ、一緒に主催をしてくれている読売新聞社、資金を支えてくれているスポンサーのみなさんの大きな支えがあって、やってこれた。
10年間で議論の質も向上したし、社会に送り出してきた人材もかなりのものになってきていると思う。嬉しい。
私は、その成長した子供たちを見ながら、10年間一緒にやっている全国の仲間たちと話をし、食事をし、
(よし、11回、20回といくか)
と思ったのでありました。
ありがとうございました。
さて、新しい携帯電話を買わねば。
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投稿: BC7管理人 | 2005/08/13 21:57