読むと書く
書写の授業が終わって、久しぶりに
『はい、起立!』
と号令をかけました。やっぱり、これがないと授業を始める気がしない(笑)
アンソロジーノートも久しぶりでした。黒板に字を書き、こんな話をしました。
『お習字をやった後の今は、字を綺麗に書こうという気持ちに成っていると思う。だから、アンソロジーノートは綺麗に書いているはずだ。それはそれで良いことだ。が、話のメモをするときには、丁寧に綺麗に字を書こうとしてはダメだ。そういうときは、早さを優先するのだ。たくさんの情報をノートに書き取るメモが優れたメモであり、綺麗な文字で書かれた情報量の少ないメモは、良い目元は言えないのである』
つまり、目的に応じて字の書き方を切り替えることが大事なのである。
これは何も文字だけの話ではない。読むに関しても言える。
◆
本の読み方にもいろいろな読み方がある。丁寧に読む読み方と、ざっと読む読み方である。丁寧に読むには、
・ 暗記しながら読む
・ 書き写しながら読む
・ 線を引きながら読む
・ 一度濡らして読む *1
・ 声に出しながら読む
などがある。
この中で君たちにお勧めなのは、「書き写しながら読む」である。
今の作家は、原稿用紙に万年筆というスタイルで書いている人は少ないと思うが、私が中学生の頃の作家は、基本的に手書きであった。私は、気に入った本があると、気に入った部分をノートに書き写しながら読んでいた。誰かの本に
「書き写しながら読んでいくと、その作家の息づかいまでが聞こえてくる」
のようなことが書いてあったのだ。
当時私は、ギターを弾いて歌を歌うことに嵌(はま)り始めていて、大学ノートに歌詞を書いてその歌詞の上にギターのコードを書いてなんてことをしていた。で、その延長で自分の好きな詩、短歌、俳句、文章を大学ノートに書き写し始めたのだ。
全てが全て、作者の息づかいが聞こえるわけではないが、
(ああ、ここで句読点を打つのは納得がいくなあ)
なんて思いながら、書き写したことを覚えている。
その大学ノートに書いてあった作品を、コンピュータに打ち込み直したのが君たちに紹介している「アンソロジーノート」の作品なのである。
◆
「池田、読んだら、書くんだよ」
と話されていたのが、私の大学時代の恩師、竹内常一先生である。ディベートを学び始めた頃の私は、
(読んだら、話すじゃないのかな?)
と思ったものだが、確かに今は、
(ははあ、読んだら書くだな)
と思うようになっている。
読んだ内容をノートに書き写す。
そして、
なんでこの内容を書き写したいと思ったのかをメモしておく。
授業で使っているアンソロジーノートを使っても良いと思う。自分の好きな言葉を書き加えておくと良いよ。
意見文を書く練習にもなるが、何より、君が中学時代に出会った素晴らしい言葉を残しておくことは、君の人生を豊かにすると思うよ。
*1 私はこうやってゆっくりとページを捲らざるを得ない状況を作って、ムツゴロウシリーズを中学生の頃にじっくりと読んでいましたが、良い子のみなさんはまねしないでね。
(教科通信「志学」 NO. 22 より)
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