大人っていいなと実感することの多い週末であった。
土曜日は、いろいろな高校生を相手に授業をした。
教師を目指したいと感じたり、思ったり、考えていたりする生徒が80人ぐらい集まっていた。70分の授業時間であった。
ま、最初はざわざわするのもこういう時は仕方がないこともあるのだが、10分ぐらい過ぎても私語が止まらない三人組の女子高生がいた。この子たちは教育に興味があってきているのではなく、取りあえずここにいるというオーラを出していた。他の生徒が集中しているのだから、私の問題ではないと判断し、
『そこの三人、出て行きなさい。君たちはここで授業を受けることを認めない。他に行きなさい』
と言ったところ、出て行かない。だが、動かなかったので授業を進めた。まったく。教師を仕事として考えている子どもたちにとってはいい迷惑だ。ガイダンスの授業だって私はこういうのは許しません。
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びっくりしたことがあった。高校生相手の講座であったのだが、現役の高校の先生が自分の研修としてこの会に参加していたのだ。確かにその専門の入門を高校生に授業形式で行うのだから、大人にとってかなり合理的な学習法である。
こんなに熱心に学ぶ先生がいらっしゃるんだなあと思った。その先生からの評価もありがたい評価を頂いたので、良かった良かった。
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授業後、昼ご飯を食べてしばらく会場をぶらぶら。
鈴木大拙の展示会が合ったので、見学する。
90歳まで大学の教授をして、95歳まで名誉教授。そして永眠。
この知性はなんなんだと思っていた。
まったく違う専門分野ではあるが、その知性の圧力を心地よく感じ、エネルギーを貰う。
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夜、奥さんの友人ご夫妻が京都に来ると言うので、一緒に食事。
紹介してもらった祇園の和食のお店に向かう。
これが絶品であった。
一つ一つに手がかかっていて、丁寧な仕事が板場を見なくてもすぐに分かる。
子どものころでは経験できない値段の食事ということが言いたいのではない。初対面でありながら気持ちよく会話のできる大人、そして、甘いだけ、油っぽいだけを美味しいと感じる子どもではなく、出汁や素材、さらに調理法や器までも楽しめる大人の食事ができることに喜びを感じる。
ああ、大人で良かった。
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日曜日。
青山新吾先生が基調提案をする「人間関係的アプローチ研究会」に行く。
大阪に9:00ということで、早起き。
私は特別支援教育というものを、取り立てて勉強してきたことはない。それこそ自閉症もアスペルガーも文章上で丁寧に勉強したことはない。
だが、私に声を掛けてくださった青山先生は、私がそれらの子どもたちにも適切な指導をしているはずだと言ってくれている。二つの疑問を抱えて会場に向かった。
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正直申し上げて、私自身が子どもに接するときに必要だと思える情報は、さほどなかった。ただ、提案される考え方、話題、まとめのなかに、これらのことを指導するとすればどのような事例や観点を元に行えば良いのかという示唆はたくさん頂いた。
これらの知見をどのように授業として学生に伝えて行けば良いのだろうか。課題を一つ手に入れる。
会が終わった後、青山先生とゆっくりと感想を話したいと思ったのだが、次があるのでほんの立ち話で終えて会場を後にする.青山先生またゆっくりと教えてください。
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午後からは、内田樹先生の対談。ま、トークショーだ。青山先生の会場から30分ぐらいでいけるので、足を伸ばしてみた。
これが大正解。
面白かったなあ。
いろいろな切り口が飛び交う。
ある参加者のおじいさんはこの切り口に耐えかねて、クレームを言っていたが、ま、過激だからかもしれない。
その内容の豊かさは、先生のブログどころではない。
とても書けない。
会話からの刺激が非常に心地よく、検証すべき概念をたくさん手に入れることができた。
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対談の後、ワンコイン交流会なるものが合った。500円でちょっとしたお菓子とビールでクールダウンしようと言うものだ。当然、内田先生もいらっしゃるというので、私はきっちりマークしてお話をすることもできた。直接お話しすることもできた。いやあ、満足。
学生さんや一般の参加者もいたのだが、内田先生の話は、いろいろな人たちに届いていた。ではあるが、これが同じ内容で届いているのではない。息を吸うタイミング、笑う場所、うなずく箇所がずれるのである。だから受け止める情報は違っているはずである。だけど、届いていた。これはどういうことか。
野球に例えるのであれば、レフトからライトまでまんべんなく打ち分け、さらにフェンスギリギリから場外ホームランまで高さまで打ち分けるているのだ。だから、多くの人が自分に向かって話していると感じることができるのだ。
こんなのは、大人にならないと理解することはできないだろう。
ああ、大人で良かった。
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一日二つの研究会は消化しきれないから止めておこうかとも思ったが、青山先生、内田先生の二つとも出て良かった。
久しぶりに、自分が何ものかを語らなくても良い研究会に出席した。プレーンに感じて、じっくり考えることができたかと思う。
充実した週末であった。
大人で良かった。