こどもが言葉を手に入れるとき
ふう、やっとこれで基本的なところは終わった。
来週の高校でのガイダンスの準備である。
打ち込んだ文字数をカウントしたら、12267字だった。原稿用紙で31枚か。これを50分の授業にまとめるのね。
まとまるんだろうかf(^^;。
◆
今回参考にした本は、授業作りネットワークの仲間の池田康子さんから紹介してもらった岡本夏木氏の岩波新書の三冊『子どもとことば』『ことばと発達』『幼児期』。糸井先生がブログで紹介していた『なせ、その子供は腕のない絵を描いたのか』(藤原智美著 祥伝社)が中心。
さらには『モンテッソーリの教育』(あすなろ書房)、『ヴィゴツキー入門』(柴田義松著 寺子屋新書)、『思考と言語』(ヴィゴツキー 柴田義松訳)、『0歳からのことば育てと子どもの自立』(合同出版)『保育内容「言葉」』(ミネルヴァ書房)などにも目を通した。
いやあ、面白い。
それこそ中学校の教師をし続けていたらこういう知的な冒険に出ることはなかったろうなあと思う。言葉がどのように発生するのかなんて、疑問に思ったとしてもそのままだもんな。でも、こういうのを勉強しておいて中学校の国語の授業をやったらまた違ったものになっていたろうなと、ちょっと反省。
このテーマでの模擬授業の依頼があったとき、
(さて、この授業は作れるか?)
と思ったが、なんとか形になりそうで良かった良かった。
降ってくる仕事を受け止めることで、自分の勉強になる。ありがたいことだ。
一回目の本番は火曜日だから、まだ時間はある。
もう少し資料を読み込んでから、刈り込むか。
◆
『なせ、その子供は腕のない絵を描いたのか』(藤原智美著 祥伝社)にあった衝撃的な事例を一つ挙げておく。
引用開始 ーーーーーーーーーー
R(女児)は0歳のころから幼児教室に通わされた。絵や文字を書いたカードを見て瞬間的にいいあてるフラッシュカード、子守唄は英語のテープ、家中の家具や電化製品ネームプレートを貼り、アルファベット、カナ、漢字を覚えさせられた。学習分野はどんどん増え続けた。英会話、ピアノ、バレエとほとんど毎日、教室通いがつづいた。幼児教室の全国テストでいつも上位に入っていた。おかげで五歳の時には、なんと小学校で学ぶすべての漢字と、英会話もある程度で切るようになっていた。
国立大学付属の小学校に進み、中学校はさらに難関中の難関校に進む。けれど高校に入ってから変調が始まる。精神不安定がしだいに激しくなって行く。ついに妹の首を絞め車のフロントガラスを割る、大暴れののち、救急車で病院に運ばれることになった。
これは『救急精神病等』(野村進)という本で紹介されている少女の実例である.病院に運ばれてからの少女の言動がすさまじい。親や意志にくってかかるその言葉がきつ。毒づくにも、そのへんのヤンキーと違って心をえぐるような鋭さがある。
「精神科の医者なんて、医学部の”落ちこぼれ”がなるんでしょ」「キミ(医者)こそ精神療法を受けたほうがいい。(中略)老婆心ながら」「無力な子供を自分の『人工生命』みたいにしやがって、その人工生命が壊れたら、さっさと精神病院に送り込みやがて。その『反省』とやらを地獄の底に下りても続けなけりゃいけないのは、この壊れた人工生命を産み、そして育てたアンタ(母親)だよ。第一、アンタはこの壊れた人工生命や、そのかわいそうな妹を置き去りにして、一度家出してるじゃないか。そのことの『反省』はどうなっているんだ(略)」
この回転の速い頭脳とエネルギーをそのまま学力に振り向けたなら、きっと聡明な大人になるのだろうと、思う。けれど、彼女はけっきょく自殺してしまうことになる。この本に登場する医師は、なぜ彼女がこうなったのか、はっきりしたことは突き止められなかった。ただ、「燃えつきた」としか考えられない、という。pp.122-3
引用終了 ーーーーーーーーーー
日本の幼児教育の問題点をえぐり出しているこの本は、教科書にしてもいいかもしれないなあ。
人間の発達の力の凄さ、またその発達をコントロールしようとして失敗する人間の愚かさなどが描かれている。
◆
「今晩は栗ごはんだよ」
というメールが入った。
よし、美味しく秋を楽しむぞ。
帰ろう帰ろう。
« まだ、間に合う | トップページ | 初秋の大津の休日 »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
とても興味深い内容で、すっかり夢に見てしまいました。
最後の「栗ご飯」との落差に、救われました。いいお仕事なさって充実していますね。この本ぜひ読んでみます。
投稿: kura | 2006/10/15 22:05
コメント、TBありがとうございます。
そうですか、いま6年生の担任でしたか。
これから半年間さらに忙しくなりますね。
この本は結構衝撃的でした。
幼児教育の重要性や、人間の凄さを改めて見た思いです。読んだら感想を聞かせてください。
ことばに関わって幼児教育から大学教育まで関わることになった私ですが、前に進むに連れてズブズブと深みにはまっていく感じがするのが分かりますf(^^;。
ですが、それを幸せと思い、さらにズブズブいきたいと思います。
栗ごはんの栗は、丹波の栗でした。
ほくほくして甘みがあって美味しかったですよ。
では。
投稿: 池田修 | 2006/10/16 09:50