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2007/05/09

ドミトリーにでも泊まって

で、昨日の学生との卒業論文執筆に関する会話である。

「先生、私まだ卒業論文のテーマが決まっていないのですが」
『ん、何かい。君は大学五年生までやるつもりなのかい?』
「いいえ、きちんと今年で卒業するつもりですが」
『その割にはまだテーマが決まっていないというのは、ちょっと遅いのではないかい?』
「いえ、まあ、その。いろいろとありまして」
『ま、なんとなくは分かっているが』
「それで、卒論なのですが、日本語と留学生に付いて書こうと思っているのですが、それについて何か良い本などございませんか?」

彼女は日本語教師を目指しているのであり、それについての卒論を書くつもりである。

『んー、どうだろう。京都には若者の外国人が世界各地からやってきて旅をしている.彼らが寝泊まりをしているドミトリーにでも泊まって交流を深めてくるってのは?』
「?」

んー、伝わらないか。

『あのね。もう一度、君が話したことを言ってくれる?』
「日本語と留学生に付いて書こうと思っているのですが、それについて何か良い本などありませんか? ですけど」
『そう。ここだ。ここが君の卒論のスタートになっているのだが、これは君は疑問を持たないだろうが、私は疑問だらけなのだよ。なんだか分かる?』
「?」

『君は、卒論のテーマとして、そう数ある卒論のテーマになる可能性のあるものの中から「日本語」「留学生」というキーワードを選んでいる。君に取ってはこのキーワードは自明のことであるな』
「はい」
『だがな、私にとっては疑問だらけなのだよ。なんで君が「日本語」「留学生」というキーワードを選んだのかが、全く分からない。卒業論文を書く時に、意識してかむ意識かは別にして、君たちは自分が選んだテーマを、相手は疑問に思ってくれていて当然という構えで始めるのだが、そこが駄目なんだな』
「・・・」

『君は既に、「日本語」「留学生」というキーワードの眼鏡でこの世の中を見始めようとしている。いや、見ている。しかし、私からすれば、君が見ているその世界は、極極小さな世界でしかない。なんでその小さくて特殊な世界に興味があるのかを、君自身が理解して、その理解したものを読者に伝えなければ論文は論文になりにくいのだ。少なくとも卒業論文はそこの作業が必要だと思うぞ』
「はあ」
『でだ。そのためには内省という作業が必要になる。自分の中を見て歩くことだ。それができると自分の問題意識が分かる。でだ。その内省のためには紙にマッピングで書き出すなんて方法もあるが、私は体ごとその環境に自分を投げ出してみるというのも良いのではないかと思うのである。そうすることでそこでの肌触りが君に内省を促してくれるんじゃないかと思うのだよ。それが、「ドミトリーにでも泊まって交流を深めてくる」ってことを勧めた理由なのだがな』
「鱗が数枚取れました」
『をを、そうか。良かった良かった』

            ◆

って、そりゃあいきなり「ドミトリーにでも泊まって交流を深めてくる」って言われても伝わらんよな、分からんよな。

でも、最終的には伝わったようで良かった。


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コメント

僕が後輩たちによく言う言葉があります。

それは
「ニューロンの気持ちになって考えてみたことある?」
です。

実験をしていると、一続きのストーリから、一連の実験をするために、それぞれのデータを肯定的に解釈してしまうことがよくあります。
これを避けるために、実験者としてではなく、実験対象になったつもりで考える必要があると思っています。

でも、やはり相手の反応は
「??」
です。
そんなもんですかね。

国内のドミトリーに行くよりも、時間さえあるならば、自分自身が外国人であるような場所に行き、言葉の壁というものを体験するっていうのもいいのではないかと思います。

 
 「ドミトリーにでも泊まって」はとても素敵ですね。

 コンサルティングでも「現場を見て来い」が合言葉です。本も読まないようでは話になりませんが(先達のバトンを受け継がないようでは知的怠慢なので)、本を読んだだけで満足するようではもっといけないわけで、この現場感覚を養える、というのは大学以降での醍醐味ですよね。
 

あ、堀之内君と山中君。
二人とも関西にくるようだからそしたら、三人で飲みましょう。同じエントリーにコメントをくれた仲ですから。これは楽しみだ。

8月以降かな?

最近の私のテーマは、いかにして異分野の方と交流を持つかです。
ぜひとも、よろしくお願いいたします。

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