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2007/06/05

予行演習が出来ないのだから

授業が終わり、研究室で次の仕事のための準備をしていた。すると、
「池田先生、よろしいでしょうか」
本当は、明日の授業の準備が終わっていなくて宜しくないのだが、その顔は何か大きな案件を抱えている顔。そんなの断れないでしょ。
『なんだ?』
「あの、人生相談したいんですけ」
『ん。ま、入れ』

            ◆

国語科教育法の授業では、原稿用紙の使い方を確認していた。指導する側が理解していなければならないので、それを確認した。資料集を取り出し
(げ、げ、げ、げ、原稿用紙)
と探していたら、原稿用紙の項目のヨコに「源氏物語」という項目を発見した。

そこから話が横に行ってしまった。

『諸君、来年は何の年か知っとるか?』
「?」
『京都と滋賀に大きく関わって、1000年前であるものだ』
「??」
『源氏物語が出来てから1000年になるのだよ』

学生はこんなにチャンスなのに、何も知らない。

『石山寺にいったことある人は?』
なんと1割程度。
『あそこで紫式部は構想を練ったんだぞ。その部屋はまだあるんだぞ。もったいない。折角京都の大学に通っているのに。今校舎を出て、60分もあれば現地に行けるというのに。もったいない』

『あそこには凄い岩があるだろう。滋賀県は凄い岩が沢山あるんだぞ。琵琶湖博物館で見たことある人は?』
「・・・」
『滋賀県には珊瑚からできた岩と、火山からできた岩の二種類があるのだよ。海底で出来上がった岩がマントルの対流でハワイ辺りから流れてきてたどり着いたものと、滋賀県全体がマグマのガスの噴出で地盤沈下して、その時に出来上がった火山の岩とあるんだな。もともとこの辺りは海だったし』
「・・・」
『そんな岩のあたりに石山寺は出来て、そこで1000年前に紫式部は、世界に誇る古典を書き、私達はわずかな人生の時間を過ごしている』
「・・・」
『地球が生まれた日を1月1日とすると、キリストが生まれたのは何月何日か知っているか? 12月31日の午後11時59分46秒といわれているんだぞ。ほら、これがその資料の載っている本』
『私達の人生なんて、宇宙の時間、地球の時間で言えば100年生きても、1秒だ。ははははは。思い切りやらなければつまんないだろう?』

            ◆

てな話をしたのが呼び水になって、人生相談となったのかもしれない。

「先生。人生は究極の目標を定めてから動き出すのでしょうか?」
『ん? わからん。そうであるとも言えるし、そうでないとも言える』
「先生は、人生の究極の目標はありますか?」
『あるよ』
「それはなんですか?」
『ん。人類の平和。さらに言えば、人類を含めた動植物の安定した生存』
「そ、そんな。大きすぎます」
『だって、究極の目標だろ?』
「はい。でも、できるのですか?」
『無理。ま、100回ぐらい生まれ変われたとしても、無理。でも、究極の目標だろ?』
「はい。で、どうするんですか?」
『ま、私の人生では無理だけど、この方向は正しいと思うので、次の世代を育てるんだな。だから、いまは教師をしている』
「は、はあ」

半分冗談、でも半分本気だ。
そのぐらいのことは考えても良いだろう。なんてたって、一回切りの人生だもん。

            ◆

その後、学生の進路に関してあれこれと相談に乗る。

ビジョンを持ち、具体的に行動しよう。
初心を貫くも良し、機を見て敏なるも良し。

だれも人生は予行演習が出来ないのだから。

そして、それでも地球の時間は過ぎて行く。
琵琶湖に浮かぶ満月。
Moon


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コメント

素敵な会話です。
池田さんの会話力すごいです。

読み返してみて、なんか馬鹿自慢をしているようですが、ま、それもたまにはいいかなとf(^^;。恐縮です。

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