『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』
蟹座の私は水の近くが好きである。水の近くにいると運気が上昇すると風水をやっている知人に言われたことがある。東京の住まいは多摩川に臨み、この地ではびわ湖に臨んでいる。
いつもなら静かな揺らめきを呈しているびわ湖は、台風5号の影響だろう、湖面が荒い。その荒さが普段はない波を生み出す。定期的に打ち寄せるその波から心地よいリズムで音が部屋に届く。
朝方は比叡山から吹き下ろしていた風が、昼前にはびわ湖から吹き上げるようになった。
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『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(白川静監修 小山鉄郎編 共同通信社)を読み続けている。漢字指導をするとき、指導者がその漢字の意味を丁寧に学習しておくことは、非常に大事である。本書は、専門家の知見をふんだんに取り入れた入門書である。
日本の最後の碩学と言われる白川先生は、旧来の人類最古の字書『説文解字』で説明されてきた漢字の説明を、その『説文解字』よりも3000年前にできた文字を元に漢字のルーツを解明し直した先生である。
『説文解字』は、許慎という者が今から2100年前に小篆という字体を元に作ったものだ。白川先生が元にした3000年前に書かれていた甲骨文や金文という字体は、19世紀末に発見されている。許慎やその後の学者は資料とすることのできない文字たちが、19世紀末に発見されたのだ。
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なんという幸せだろうと思う。漢字ができて5000年。その5000年の時を越えて、白川先生という碩学の手によって解明された漢字の意味。それをたった1000円で読むことができる。値段というのはなんなのか、物の価値というのはなんなのかと改めて思う。
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読み進めると衝撃ばかりである。漢字については割と勉強したつもりだと思っていた私だが、まだまだであった。ヘーッと思う漢字ばかりである。
祭
道
尋
取
降
なんでこの漢字がこの部首でできているのか。このパーツからできているのか。説明を受ければ一発で分かる。そして、おそらく一生忘れない。物語記憶だからである。小学生にはちょっとグロテスクな説明もあるが、そこを差し引いても充分すぎる内容である。
来年の授業の課題図書候補の一つにしたい。
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ああ、風が強くなってきた。
湖面に白波が立っている。
いよいよ台風も近いか。
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