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2007/10/26

なぜ出てこないのかを考えた

日本語コミュニケーション技術1では、いよいよ第二反駁のあるディベートに入った。シナリオディベート、改良シナリオディベートとやってきて、今回は論題を変えて第二反駁のあるディベートである。ま、立論が2分だし、参考にするシナリオもあるのでそれほど大変ではないはずだ。

しかし、そう思って準備の手を抜くと大変なことになるのがディベートである。かなりしっかりとディベートの授業に取り組んでいる学生でも、混乱してる。高校時代にソフトボールをしていた学生の感想である。

>今日は初めての経験ばかりでとても焦りました。まるで、キャッチボールをするのに、どちらの手にグローブをつけて、どうボールを投げたらいいのかわからないぐらいの勢いでした。使う道具はわかっていて、それをどう活用したらいいのかわかりませんでした。

的確に自分の混乱している様子を描写している。良い感想である。来週からはいよいよ団体戦のディベートに入る。

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キャリア開発演習2では、時事ネタをどう扱うかという授業をしている。ボクシングの切腹問題から端を発したこの課題は、今日は全国学力テストの結果、ミートホープの事件へと話が進む。

実際にこれらの新聞記事を使って、朝の学活で担任としてどう話すのかということを演習としてやるのだ。これは面白い。

自分に膨大な知識、物事を見る観点、クラスの課題が見えていないと、語れない。これに気がつく演習となる。

キャリア開発演習2では、事件の文脈を読むというレッスンもしている。一つの出来事からはさまざまな考え方が導き出される。一つの事件は一つの事件ではあるが、どの文脈で語られるかによって全く違う様相を示す。

それを考えてみようと言うのも、この授業の一つのポイントだ。子どもの起こす「事件」には、どのような解釈が可能なのかを『おとなが子どもと出会うとき 子どもが世界を立ち上げるとき』(竹内常一 桜井書店)を読み開きながら追いかけているのだが、同時進行で今起きている事件も、文脈を見つけるというレッスンとして取り上げているのだ。

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その全国学力テストの結果、ミートホープの事件の演習の前振りに、私の方から今日の会見のことを話題にした。なんで父親が会見に出てこないのかと言うことである。父親が出てこないのはおかしいと言うことでは一致した。そこで、なぜ出てこないのかを考えたのだ。

学生たちに聞いてみた。すると、

1)反省していないから
2)出てくると余計もめるから
3)反省しているからこそ
4)喋りすぎて反感を買う、失敗するから
5)自分を守るため

など意見が出た。5)はひどいと思うが、1)から5)まで、まああると言えばあるだろう。
で、私の意見は、このどれとも違う。

6)子どもを守るため

である。

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父は前回の会見で、謝罪をしていないとさんざん叩かれた。今回出て行ってもまた叩かれるだろう。そして、叩かれる父を見て長男は反論するだろう。そうすると長男も叩かれる。この構図が見える。

もし、父親が出て行かなければ?

会見のはじめは長男がぼこぼこに叩かれるだろう。しかし、ここを乗り越えて父親を守れば? 弟を守れば? 

判官贔屓(ほうがんびいき)のある日本である。
(ちょっと、マスコミ叩き過ぎじゃない?)
(本当に悪いのは、父親やテレビじゃないの?)
という意見が出るだろう。
そして、
(お兄ちゃん、頑張れ)
(次は、リングで頑張れ)
という流れになるのではないだろうか。

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そのストーリーを構成作家が設定して、とあるところで打ち合わせをして、
「これでいきましょう」
と会長に伝え、
「ここはこのように答えるんだぞ」
と想定問答集をして・・・、なんてのは考え過ぎだよなあ。

ただ、父親が顔を見せないというのは、父親が悪役に徹することで子どもを守れるという考え方は、なくもないかなと。

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それにしても、NGワードは決して話すことなく、あのように受け答えたお兄ちゃんの会話の力はかなり高いと感じた。20歳であれだけのバッシングの中で、あのように答えられる若者は、そうはいないでしょ。分かっていても出来ないでしょう。

もちろん、だからといって一連の試合で行ったことが良いとは思えません。むしろ、あれだけの能力をあんな風にしか使えなかったのは、もったいなかったなあと思うわけです。

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学生諸君に、実際に言葉に出して語らせてみると、いやあこれがなかなか。ま、今からそう簡単にはできないだろう。しっかりと新聞を読んで力を蓄えるんだよ。

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