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2008/06/13

その未来に関わる事を許された存在

先生をお見送りしてから、大学に戻り授業。キャリア開発講座である。先週は中村健一先生に授業をしていただいた。今週は、私が行う。

授業に参加している学生は、竹内常一先生の授業を受けていたメンバーと重なる。授業導入の時間で、少し竹内先生の逸話や私との関係などを話す。

『先生の話は分かった?』
分からないような顔をしている学生が多い。
『でも、良かったでしょ』
うなずき多し。
『で、何を言っているのかよくわからないけど、大事なことを言っていると言う感じは分かった?』
大きくうなずく顔、顔、顔。

そうなのである。先生の話はそうなのである。

『君たち、理解しようなんて思わなくていいから。大事なことを言っていそうだと感じられれば良い。そして、それをどんどんノートに書く事だ。やがて、あっそうかと分かる時が来る。私もそうであった』

『特に先生は、大事な事を高音で早口で言われる。(先生、そこはゆっくりでしょ)と思うだろうが、ゆっくりには話せないんだなあ。だから、メモをとる技術が必要になる。一回生の時からメモをとれと言い続けているのが分かるだろ?』
これも、大きくうなずく顔、顔、顔。

一回生のときから言い続けている事が、少しずつ彼の中に実感として残り始めているようだ。これは頼もしい。

            ◆

本論では、『こんな時どう言い返す』の理論の解説を少し行って、後半はワークである。

理論では、子どもに納得は必要なのかという問題を取り上げてみた。学生たちは子どもが納得するような説明を何が何でもしなければならないという考え方を持つ事が多い。それはそれで良い事ではあると思うが、正しい事かと言えばそうではないと私は考えている。

なんとなれば、子どもが納得するような説明を何が何でもしなければならないという考え方を持って臨むと、「納得しないからやらない」という子どもを育ててしまう危険性があるからである。

世の中には、納得しなければやらなくていいこともあるかもしれないが、そうではないこともある。また、納得したときにはやるべきタイミングを逸していたということもある。さらに、「納得しないからやらない」と言いつつ、実は「嫌だから、めんどくさいから」という理由のごまかしである場合もある。

教育は強制である。その人と、人類が幸せになることを求めるための強制の学びである。私たち大人であり、教師である者は、その未来に関わる事を許された存在である。まして、教師はそこに直接関わる事が許された仕事である。野口芳宏先生のおっしゃる「良い強制」はしなければならないのである。

納得できる説明を教師が考えて説明する。これは大事である。しかし、その一方でここに捕われすぎると、指導が空回りする。では、この境目はどこにあるのか。これは、これからの授業の中で学生たちに考えさせて行くところである。

            ◆

後半のワークは、時事問題について行う。秋葉原事件である。時事問題は扱いにくい。事実が確定しきれていない面もあるし、評価も定まっていないからである。しかし、子どもたちは事件を知っている。そして、この事件について先生はどう思っているのかを知りたい。スルーすればスルーしたと言う事実が残る。

子どもたちは、先生を通して事件と社会とに関わっているのである。もう少し言えば、事件と先生を通して、社会の見方、価値観、ルール等に触れ、自分の世界を作り上げて行くのである。だから、時事問題は重要な教育の機会なのである。単なる雑談ではないのだ。

学生に5人ぐらいの小グループを作らせて、一人一人が小学校の先生になったという想定で、設定した対象学年の小学生役の学生に向けて、月曜の朝の学活の時間に1分間で語るというレッスンを行った。

私は50人弱の学生に指示を出して動かす。その際、私が集団を動かす際に重要な観点を具体的に説明した。すなわち「一時一事」の法則や、「説明→質問を受ける→実際にやらせる」や、「予行→修正→本番」などのことである。

教員が出している指示や説明。さらには活動のさせ方というのは適当に出しているのではなく、きちんと練ってさせていることを理解させる。ま、手品を種明かしされながら見ているという感じであろう。

このように解説しながら、同時進行でワークをさせる。二重構造の学びである。

            ◆

3分の準備で1分のスピーチを作らせ、実際に全員にさせた。代表者にみんなの前でもさせた。二回生にしてはまあ、それなりに言えていたとは思う。しかし、学生たちは私の解説等を聞きながら、自分の課題をたくさん見つけていた。

そうである。それでいいのである。問を見つける事、課題を見つける事これが大事なのである。語りの弱い学生、立ち方が不安定な学生、声の小さい学生、話す内容がなくなってしまった学生、口癖で誤解を与える学生・・・。

さあ、勉強せい!

            ◆

二日間の充実した時間を終え、研究室から出ると心地よい疲れ。
そして、美しい夕焼けが目の前にあった。
いやあ、良かった良かった。

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