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2008/10/28

「妙な正しさの殻」

先週の学級担任論の授業後の、質問で多かったのが給食指導についてである。やり方云々ではない。食べ物の好き嫌いの指導に関して
「自分も食べられないものがあるのですが、そういうときはどうしたらいいのでしょうか」
というもの。

食物アレルギーではないのに、食べられないと言う子ども。そして、先生。さて、どうしたらいいのでしょうかとあれこれ。

食べられないのか、食べないのか。自分が嘗て食べられなかったものはどのようにして克服したのか。そもそも食べるということはどういうことなのか。「頂きます」「ごちそうさま」ってどういうことなのか。

もっと話したのだが、話しながら思うのは学生たちは固いなあということ。実践はもっと豊かであるのに、ねばならないに捕われすぎている感じがする。この「妙な正しさの殻」を壊していくことも大事だと感じる。

後半戦は、学級の集団についての考察。公的なものと私的なものに分けて、家本芳郎、向山洋一、野中信行の三先生の実践に学ぶ。そこに私の実践や仲間の実践も紹介しながら進める。

学生たちが身を乗り出して聞くものだから、つい具体例を多く出して語ってしまった。その結果、時間切れで公的なものだけで終わってしまった。ま、良しとしよう。来週は私的なものについて取り上げる。さらに教室環境整備のことも取り上げる予定である。

先週の授業で「レクリエーション活動を通して学級を作るとは」を学んだ学生たちは、子どもたちには普段見せない教師の指導の哲学の部分を考えるようになってきている。

指導の技術は、技術だけで独立しているのではない。教育の哲学や目的を具現化するために使われるのであるということを、少しずつ理解し始めてきている。簡単に言えば、いくら教育の技術を知っていても、教育は出来ないということである。

私は言語技術というジャンルで、ディベートを指導してきている。当たり前であるがディベートの技術を持っていれば、言語の力があるということにはならないのを知っている。ディベートは万能ではないし、伝える内容がなければダメだと言うことである。

もともとディベートに出会ったとき、私には分からないことがあった。休み時間にあれだけ話をしている生徒たちが、授業になると話すことができなくなる。これはどういうことであろうかと思ったのである。

私の立てた仮説は、次の二つ

1)公的に話す内容がない
2)公的に話す話し方を知らない

私は内容はあるだろうが、話し方を知らないのではないかと仮説を立てた。全生研では、「対話 → 討論 → 討議」と集団での話し合い活動を発展させて行くというセオリーがある。私はこの「対話 → 討論」の間に、もうワンステップ入れるのがいいのではないかと考えたのである。つまり「対話 → ディベート → 討論」である。そうすることで、2)をクリアできると仮説を立てたのである。

あの仮説は半分当たって半分違った。つまり、話し方を理解した生徒は話せるようになったが、一方で話す内容を手にすることの出来ない生徒たちは、ディベートだけではダメと言うことが、改めて分かったのである。

だから、「イメージの花火」などの実践を重ねて行くようにしたのである。

これらの考え方が、授業を通して少しずつではあるが学生たちに定着してきたことを嬉しく思う。
『本を読め、メモを取れ、教育実践の現場に行け、研究会は二次会まで参加しろ』
と命令ばかりの私であるが、一期生を一年半指導してきて、やっと少し山が動き出したと言う感触である。

げに、教育とはかくの如しである。

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コメント

「対話」はテクニックではなく態度であり観念であることが分かってきました。「相手の意見に学んで、自分を変えていく(成長させせようとする)可能性」を保持する心構えが大切なんですね。相手が学びたいと思うことを言わなければ、受容しても変わらなければいい。
今の立場で話を聞いていると、どうしても役人の方々はテクニックにこだわっている印象をもちます。今日は東京ミニマムの指導主事向け説明会を後ろの席で聞いていました。教育委員会にはテクニックさえ身につけていれば、誰でも素晴らしい教師になれるという幻想があるように感じます。しかし、大事なのは立ち位置であり、構えなんですね。そこを、他の先生に伝えていくことに難しさとやりがいを感じる今日この頃です。

術の教育は、観の教育が前提になっていると思うのですが、ここを取り違えてしまう学生たちがいるわけです。もちろん、術も大事ですが観との関係を理解しなければならないんですがね。

しかし、本当に教育委員会はそんな風に思っているのでしょうか。もしそうならちょっと心配だなあ。

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