読書へのアニマシオン
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読書へのアニマシオンは、スペインのモンセ ラット・サルト氏が開発した手法だ。本一冊を丸ごと楽しむための「作戦」が75種類作られている。
10年前に、そのモンセさんが84歳で来日されていたときに、私は直接お会いしている。上野で行われた「国際読書教育シンポジュウム 『生きる力』をはぐくむための、読書教育のあり方」というのに、参加したのだ。
国語科を実技教科にしたいという思いを持っていた私は、そのこともあって参加したのだった。84歳とは思えないエネルギッシュなモンセさんのお姿に、びっくりしたのを覚えている。今回の明日の教室の講師の先生にも、ここでお会いしている。
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伝統的にヨーロッパでは読書教育はきちんとされる。それも分析批評の方式に則った、かなり厳密な読み方を身につけさせられる。ここでレッスンを受ける生徒たちは、やがて絵画でも音楽でも分析批評の方法で解釈することが可能になるらしい。
しかし、どこの国にもそういう「きちんとした」方法でやる勉強に向いていない子どもというのは、いる。問題はその子どもたちをどうするかである。
モンセさんは、この子どもたちにも読書の楽しみを共有させたいと考えたのである。そして、その方法が「読書へのアニマシオン」である。
つまり、本が嫌いという子どもたちを本の世界へと招待する「作戦」が、読書へのアニマシオンなのである。
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確かに、いくつかのルールはある。例えば、本を丸ごと一冊扱うこと、同じ作戦は二回使わないことなど。スペインではアニマドールと呼ばれる専門の人が、地域の児童館などで指導している。学校ではやらないのだ。
だが、日本の実情を考えると学校でやるなどのことは仕方のないところであろう。それであっても、読書へのアニマシオンはとても面白い。
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土曜日の明日の教室は、その読書へのアニマシオンの指導での第一人者の慶応義塾普通部の鈴木淑博先生にお越しいただいたのである。私も誘われたが中三の担任をしていたので行けなかった、本場スペインでの読書へのアニマシオン講習会にも参加されている先生である。
的確な読み、うっとりするような声質、包み込んでしまう笑顔など、読書へのアニマシオンをするためにいらっしゃるかのような鈴木先生のワークショップは、参加の皆さんをうならせた。
休憩時間の合間に、先生が持参されたご著書は、あっという間に売り切れてしまったほどである。
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10年なんてあっという間だなあと、改めて思う。人生は思ったよりも短く、切なくすぎていくと思う。
久しぶりに会った参加者の方たちと、食事をしながら思う。
(ここにいるみなさんと、もう4年もやっているんだなあ。ここでの10年なんてのもあっという間なんだろうなあ。その時は、少しは成長していたいなあ)
と思いながら、切なく心地よい時間を過ごしたのでありました。
鈴木先生、ありがとうございました。
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