本日『街場のメディア論』(内田樹 光文社新書)を読み終える
10/22
本日は、オフ。風邪を治すことに専念したいが、読みたい本は山積み。研究室も片付けなければならない。そして、 「今日はお父さんが迎えに来てね」と幼稚園に行くときに娘が懇願する。今日は、オフではある。取り敢えず朝風呂に入りながら本を読むだけはした。今日はオフだ、が。
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今頃であるが、本日『街場のメディア論』(内田樹 光文社新書)を読み終える。ゆっくりゆっくりと片手に鉛筆を持ちながら、内田樹先生と会話を楽しみながら読み進めたので、二ヶ月近く掛かっていることになる。
こういうじっくり楽しめる本は、じっくりと楽しむべきである。年間に相当の量を読んでいる私ではあるが、本によって随分読み進めるスピードが違うのだ。
で、『街場のメディア論』である。第一講の「キャリア論」なんて、私が中学校の教員をしているときに、こっそりと言っていたことを書いて下さっていて、びっくり。
いや、なんでこっそりと言っていたかと言うと、私は進路指導主任をしていて、その時の流れは「自分の個性や適性を考えて、将来の仕事を選びましょう」「自分の好きなことを仕事にしましょう」というものであったから、それと違う考えの私は、こそっと行っていたのである。
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私は、自分の個性や適性で選べる仕事なんてのは、いまある仕事に適合させるようなものであり、これから生まれてくる仕事には対応できない。だいたいからして10年前に元気のあった仕事が凋落している例はいくらでもあるし、10年前になかった仕事が盛んになっている例も多い。
また、個性や適性は、子どもとしてのものであって、仕事人としてのものではないし、仕事をするにあたって、その人の個性や適性なんて考慮されることは新人の場合にはないってことだ。
個性や適性でなければできない仕事は、出来なければならない仕事が出来た上で、その上のクリエイティブな部分で必要になってくるものであって、就職の際には必要ない。そして、その個性や適性は仕事に取り組む中で生まれてくるというものだからである。
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確かに『13歳のハローワーク』はインパクトのある良い本である。しかし、好きなことだけで仕事なんて出来ない。仕事は、1)収入を得る。2)自己実現。3)社会貢献。の三つから成り立っていると私は考えている。『13歳のハローワーク』は、このうち2)だけで仕事を考えて行けば良いような感覚を醸し出す。
好きなことを仕事にする。ということは、好きなことがないと仕事に就けないということである。しかし、これは本当であろうか。
東大の文一を卒業した人たちにアンケートをとったら、中学生のときに抱いていた自分の就きたい仕事に就くことの出来た人は、3割だったというものを読んだことがある。
好きなことを仕事にするって、そもそも無理ではないかと思うのだ。ところが進路指導をする教員は、基本的に「好きなことを仕事にしている」のである。教員は自分がなりたくてなった仕事なので、進路指導についてもこれを当てはめようとする。私は違うと思う。
好きなことを仕事にするのではなく、就いた仕事を好きになるのである。この方が幸せに近いと思う。そのためには、自分が何を好きで、何に適しているかを調べるのではなく、自分は何がキライで、何に適していないかを知っている方が良いはずである。なんとなれば、その方が仕事に対するストライクゾーンが広くなるからである。
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ってなことを、こっそりと話していた。だが、真実だと思っていた。それとほとんど同じようなことを更に分かりやすく、さらに論理的に内田樹先生は書かれている。いやあ、嬉しかったなあ。楽しかったなあ。
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で、結局お迎えは私。迎えに行ったら、
「お母さんは?」
と。
『え?』
「三人で帰りたかったの」
と。
そりゃあ困る。お母さんは買い物に出かけてしまっているのだ。
そこで、
『じゃあ、公園に行こうか?』
ということで、近くの公園に行くことになった。
公園は小学生の遠足で大にぎわい。
娘はその小学生の中に入って、黙々と遊具を渡り歩く。
この遊具を全て渡り切った娘。こっちは下でハラハラ。本人は、大満足。そして、早速二回目に挑戦。君は何を目指しているのかね(^^)。
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最後まで渡り切って満足した様子だったので、娘にお願いをした。
『ハンモックをやっても良いですか?』
「うーん。いいよ」
『やった!』
公園で車に積んであるハンモックを取り出して設置。仰向けになって色の変わり始めた銀杏、椛などを愛でる。
公園の清掃をしにきている中学生が、
「あ、いいなあ。ハンモックだ。乗りたいなあ」
と次々に言いながら過ぎて行く。さすがに、100人にどうぞとは言えないf(^^;。
こうやって公園に、普通に設置されていればいいのになあ。ハンモック。小中学校の校庭にもあるといいのになあ。ハンモック。幸せが増えると思うのだが。
そんなことを思い描いていたら、そこにダッシュしてきた娘が飛び込んでくる。腹筋を鍛えることになる。今日はオフなのである。研究室の片付けは、明日の朝にしようf(^^;。
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コメント
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村上龍さんは本校に来られたときに「好きなことをきっかけに仕事を選ぶと、努力を苦痛と感じなくて済む」と言っていました。
http://www.youtube.com/watch?v=MYIEHnIZhIs
「自分に合う仕事ではなく、自分が向いている仕事がいい」
「仕事は探すのではなく出会うもの」
「28歳までにこれで食べていくという仕事を決めて、35歳までキャリアを積む」とも。
内田樹さんの言っていることとも矛盾はないと感じました。
京都明日の教室に後ろ髪をひかれつつ、土曜参観に行ってきます(ノ_-。)
投稿: J.SASE | 2010/10/23 06:54
なるほど。そうだとすると、誤読する人が多いのかもしれませんね。私もその一人かもしれませんがf(^^;。
投稿: 池田修 | 2010/10/23 07:47