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2011/02/14

彼の仕事

一昨日、東京から帰る新幹線に乗る直前のことの話だ。新幹線の中で食べるおつまみを捜して地下街をうろうろしていた。結構食べた後だったので、一品何かあれば良いと思い、小松菜の炒め物とビールを手にしてホームに上がろうとした。

何気なく飛び込んで来たのは、チーズの試食であった。若い女性達が三人並んで試食しようとしていた。(ん、チーズも悪くないな)と思い、ちょっとだけ並ぶことにした。私の前の三人の女性に、彼は丁寧に語りかけていた。それは、なんというか朴訥を絵に描いたような語り方だった。

私は発車の時刻が迫って来ているのに、聞き入ってしまった。お客さんにチーズの魅力を伝える語りというよりは、寧ろチーズに語りかけているような、愛しいチーズを自慢しているかのようなその語りにである。彼は生ハムにそのチーズをこれでもかというほど乗せて試食させていた。ゴルフボールぐらいの大きさで。

下世話な予測だが、あれが三つあればちょっとしたバーであれば1500円は取るだろうというぐらいの量である。私の前にいた三人は一つずつ食べて、何も買わずに帰って行った。私は見ていただけだったのだが、彼が手を動かして私のを作り始めていた。

『私にもくれるの?』「もちろんです!」と嬉しそうにチーズを丸め、生ハムを乗せてくれていた。そして、このチーズがいかにいいチーズかを嬉しそうに語ってくれた。またこのチーズの相棒としていかにこの生ハムがいいのかも。まるでが育てた野菜を自慢するかのような感じで。

私はそっと手に取って口に入れた。(うわあああ、うまい)。『美味しいですねえ』と即答。彼はとっても嬉しそうに「ありがとうございます」。そして、それだけで満足してしまったかのようであった。(おいおい、売らなくていいの?)とこちらが心配してしまうほどであった。

彼の仕事は、そういうスタイルなのだろうなあと思った。朴訥に、いやそれすらも意識していないかもしれないが、朴訥に。そして、そのチーズの持っている一番いいところを紹介する。それだけで、満足するかのような「売り方」だ。

私? もちろん買いました。チーズの美味しさもそうだけど、そんな仕事ぶりを見せてくれた彼から買いたいと思ったのだ。とても幸せな気持ちになれるチーズ、彼の仕事のチーズの話でした。おしまい。

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(写真はイメージです)


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