クローン人間の問題は、今ひとたび倫理の問題に焦点を当てる
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ノーベル賞が齎されるかと思いきや、残念であった。IPS細胞はもの凄いインパクトがあると思うのだが、今回は受賞することができなかった。光よりも速いスピードのニュートリノの存在や、アインシュタインのλ係数は本当だったとか、
(もうこれ以上そんなにびっくりするような発見はないんじゃないかなあ)
と思っていた20世紀の末だったが、なんのなんのビックリする発見が続く。
◆
学生たちにこのノーベル賞のISP細胞の話をした。この細胞の衝撃は、クローン人間の誕生につながる可能性があるということである。
『で、クローン人間は賛成? 反対?』
と聞くと、賛成は1割にも満たない。
『では、クローン牛は?』
と聞くとこれは、5割ぐらいが賛成。
『では、なんで牛は良くて、人間は駄目?』
「いやあ、人の誕生は加工されるのはどうも」
『では、不妊治療はどうなる? いま、日本の夫婦の10組に1組は不妊に悩んでいて治療を受ける人もいるんだけど、これは? 君たちの可能性もあるし、君たちが出会う子どもたちの可能性もあるな』
「うーん.....」
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『ちなみに、大学生で耳にピアスをしてもいいと思う諸君は?』
これは9割以上が賛成。
『では、こんなのは?』
と未来の話をする。
『「お母さん、一分間に1000字書ける右腕がコンビニで500円で売っているんだけど買っていいでしょ。テストのときに楽なんだもん」とあなたの中学生の娘に言われたらそれを許す?』
これは全員が反対。
『なんでなの?』
「どうも生理的に駄目です」
『そうでしょ。実は私は君たちが耳にピアスをするのをその生理的に駄目な感覚で見ているのだよ。ただ、これは時代の違いではないかと思う。だから、良い悪いではなく、時代や社会の許容範囲の問題だと思うのだ。ピアスぐらいという感覚は君たちは持っている。だが、右腕ぐらいという感覚はない訳だ。ピアスが駄目という人たちの感覚はわかったかね?』
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ここで考えてみたかったことは、技術と倫理の問題である。
IPS細胞のおかげで、クローニン人間は技術的に可能な領域に入った。
今までは技術的に不可能であったので、クローン人間は賛成、反対?という議論も机上のものであった。しかし、技術的にできるようになった。
そうなると、倫理の問題である。
倫理は、技術的に可能になったことがらをやっていいのかわるいのか考えることと言うことができるかもしれない。人類が原子力手に入れたとき、これを使っていいのか悪いのかの議論があり、人類は使うことを選択した。
倫理、倫理観というのは、その人間の育つ環境によってかなり違う。だから、あるところでは駄目でも、あるところでは問題ないということがあり、さらに開発競争によって得られるメリットを考えると、やめることはなかったということであろう。これはクローン人間に関しても同じことが言えるだろう。
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クローン人間の問題は、今ひとたび倫理の問題に焦点を当てる。
こういうことを一つ一つ丁寧に考えさせたい。
唯一絶対の正解を求める訳ではない。
自分の頭で考えること。
これをさせたい。
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