『もの食う人びと』(辺見 庸 角川文庫)
この本を読み終わるまで12年掛かったことになる。
『もの食う人びと』(辺見 庸 角川文庫)だ。
何かの書評で見つけて面白そうだと購入し、読み始めてはどっかになくしてしまうことが続き、結局読み終えたこの本は三冊目ということになる。
初版で買ったのが平成九年。今手元にある本は平成十五年で十四版だ。ま、この本を手に入れてからももう既に八年も経っているが。
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だが、おそらくこの本は私にこのタイミングで読まれるために、無くなったり隠れたりしていたのではないかと思えた。
本は、筆者の辺見さんが世界中のさまざまなものを現地で食べ、そのことを書いたドキュメントである。今から20年前の世界が描かれている。食べたものと言えば、
346pから引用開始 ーーーーーーーーーー
ダッカの残飯、ビター、猫用缶詰、ソムタム、キャッサバ、ジュゴンの歯の粉末、スズメ、フォー、バンザイ、ドイツの囚人食、ドナー・ケバブ、サチカオルマ、ボグラッチ、旧ユーゴ難民向け援助食料、...
引用終了 ーーーーーーーーーー
と実に様々。それだけでも圧巻である。
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その中に、「禁断の森」と名付けられた一編がある。まるで福島原発事故のことを書いているのではないかと思いながら読み進めた。勿論、20年前の書籍にそんな記述があるわけがない。これは、チェルノブイリのことなのだ。
電力、放射能、働き口、老人、食事。
ここで語られていることは、20年前のチェルノブイリのことではなく、今の日本のこと、これからの日本のことではないかと思えて仕方がないのだ。12年前に一気に読んでしまえば、この一編は、単なる他人事として読み飛ばしていたかもしれない。だが、今は違う。
なんて自分勝手なんだろうとも思う。
だが、今読めて良かったと思う。
『もの食う人びと』(辺見 庸 角川文庫)「禁断の森」
ここだけでも読んでみることをお薦めする。
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