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2011/12/02

卒論提出に向けての日々

12/1

事務仕事のためにキャンパスをうろうろしていた。すると、卒論に向けて走り回っている学生たちに会った。去年授業を受けていた文学部の学生たちである。本学の卒論の締め切りはあと二週間後。『どうだい調子は?』と聞くとどうも顔色が悪いし、やつれている。「いよいよです」と言いながらまだ進んでいない様子。

私のゼミの学生は、卒論提出に向けて本日3名が発表。規定の2万字はクリア。あとは、精度を高めて、締め切り日までに提出というところまで来た。ところが、去年の学生はまだまだ。卒論のテーマを聞くと日本の色に関して文学作品との関わりを論じる予定とのこと。え~!それにぴったりの本がある。最近買った色の辞典だ。

事務方で打ち合わせをする時間を少し延ばしてもらって、再び研究室に戻る。そして、件の本を捜して貸し出してあげる。少し、顔色が良くなる。ああ、良かった。色の中でも青色を扱うという。青は良い色だ。だが、なぜ数あるテーマから色を選んだのか。数ある色から青にしたのかを論じろ。青の補色も検討しろなどをアドヴァイス。

事務方との打ち合わせをしたら、また別の学生とばったり。卒論指導の順番待ちだとのこと。あれこれ話して別れてから、その学生に話そうと思っていたことがあったことを思い出す。キャンパスの中で大声でその学生の名前を叫ぶ。ああ、もう図書館でも入ってしまったかな? と思ってエレベーターを待っていた。

そしたら、走ってやってきた。『すまんな。ちょっと話しておいた方がいいかなということを思い出したのだよ』『先日、教育実習の反省会で、身長の低いことを高校生に馬鹿にされたという話をしていたよな』「はい。その時には人が努力しても直らないことを馬鹿にするのではない、と指導せよと」。

『そうだ。そう言った』『それで、他の言い方も無いかなとあれから考えていて、思いついたことがあったのだが、なかなか会えなかったのでね、いま言おうと思って』「はい」『確か、実習先の生徒達は、学力が低い生徒達だと言っていたよね』「はい」『であるとすれば、こういうのはどうだ?』

『君たちは、私の身長が低いことを馬鹿にしているが、なんだかなと思う。私は努力してもこの身長が伸びることはもう無いだろう。しかし、君たちの馬鹿は、努力すれば直る。努力すれば直るのにやらないのは、いかがなものだろうか? という感じで言うのはありではないか?』
「はい、ありがとうございます!」と学生は返事をしてくれた。

これは捨て身の返答で、自分が身長が低いことを受け入れていなければ出来ない返答だ。だが、受け入れた時この返答は相手のかなり深い所に届く。恩師は、自分の運命を引き受け背負った時に、進みだせると仰っていた。私もこれは実感している。しかしそこまでは解説しなかった。

解説しなくても、この言葉の意味が彼に届いたなと思ったので、解説しなかった。四回生は大学に来ないし、卒業も近づいている。三ヶ月経ってやっと伝えられた。ほっと一安心。卒論は文章に向かいながら自分とも向き合うことになる。卒論で難儀している学生諸君、頑張れ。

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