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2012/09/12

なかなかやるな、耳鳴りは

9/12

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大学に移った年の冬。入試の最終日の事だったと思う。
突然右耳が聞こえなくなった。
近くに居た看護学部の先生に相談したら、
「突発性難聴だと思います。直ぐに病院にいって。72時間が勝負です」
と言われた。

で、勝負に負けてその後耳鳴りの後遺症が残る事になる。
耳鳴りなんて簡単に治るかと思っていたら、あにはからんや。
治らないのだ。
簡単に言えば、一生この耳鳴りの世界に住む事になってしまったのだ。
その時は、一瞬だが右耳をピストルで撃ってしまいたいと思う位の絶望感に包まれた。

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医者は言った。
「ま、なかなか治りませんが、慣れますから」
と。
余りの言い方に
(本当に、人ごとだよなあ)
と思ったのを良く覚えている。

いまでも耳鳴りはする。
居酒屋等に行くともう殆ど聞こえない。
悪口は聞こえる事もあるがf(^^;、聞こえない。

今日は、七十二候では、鶺鴒鳴(せきれいなく)である。
秋が深まって行くのが分かる。

研究室から出て車に入る。
車の中は日中の太陽で暖められた熱がこもっている。
だが、その熱も随分と穏やかになって来ている。

窓を全開にしてゆっくりと流しながら走る。
ああ、そうかと思う。
車窓からは秋の虫の鳴き声が聞こえてくる。

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少し前までは蝉の鳴き声であった。
右耳の耳鳴りは、夏のときには確かに蝉の鳴き声のように感じていたのだが、
いま、左の耳から入ってくる秋の虫の音に刺激されてか、
右耳の耳鳴りは、秋の虫の音のように響いている。

(なかなかやるな、耳鳴りは)
と思ったりする。
耳鳴りになった御陰で、こんなことも味わえるんだなあと
秋の夜に思う。

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研究室から見えた今日の夕暮れの空は、こんなにも変化していた。
私も少し変われたようだ。

人生はなかなか味わい深い。

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