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日本語コミュニケーションの授業。ディベート。本日は二回目。
ここは、去年までと大きく変えた。
「ディベートで大事なこと」という項目の5番目に「準備無くして対戦無し。準備がディベートの7割を占める」という文言があるのだが、ここを手がかりにして話を進めた。
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この授業を受けるのは、基本的に児童教育学科の一回生である。彼らには、ディベートの基本的なスキルを身につけさせる。理論を理解する。小学校でディベートの授業が指導できる力を身につける。この三つを主な目標として授業を行っている。
私がこのディベートの授業で行っているのは、シナリオ方式のマイクロディベートである。学生達は、これを、当たり前だが、なんの疑問もなく取り組んで行く。ま、それで良いのだが今年はここをもう少し膨らませようと思った。このシナリオ方式のマイクロディベートがどのように生まれて来たのかを話そうと思ったのだ。
この部分の学術的な検討は、私の修士論文、または、この修士論文を元にした『中等教育におけるディベートの研究』(大学図書)にある。そして、これを教科書にしているのだが、そこをじっくりと読むのはまあ大変なことだ。折角著者が授業をしているのだから、そこをかいつまんでエピソード的に話してみようと思ったのだ。
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この授業を受ける学生達は、将来教職に就く。
授業は、教科書を教えればいいと思っている一回生が殆どだ。
その彼等に、ディベート指導を通して授業を作る、教材を作るというのはどういうことなのかを具体的に説明する機会を持ちたいと思ったのだ。
私はディベートを学生時代に学んだ者ではない。教師になって二年目位に、ある教科書教材を使って授業をしていたら、非常に議論が盛り上がって
「先生、こういうのもっとやりたい」
と生徒にいわれ
『たしか、デなんとかというのがあったはずだ』
というところから独学を行って指導を始めた。まだ、パソコン通信すら無かった頃だ。
そこからシナリオ方式のマイクロディベートの指導方法に至までを60分ぐらいを掛けながら話した。
そして、
『で、まあ、ここまで60分掛けて話したんだけど、実際の時間は14年間ね』
と付けくわえた。
『君たちは、お得だねえ。14年間を60分で聞けるんだから。ま、学生さんの良い所だよね。幸せだよねえ』
と言っておいて、さらに付けたした。
『でも、正確に言うと半分幸せで、半分はそんなに幸せでないかもね。効率よく学べるという点では幸せだけど、ゼロの状態からどこに問題が隠れているのかを発見し、自分と自分の研究仲間と少しずつその問題を課題に変えて、作り上げて行く喜びは得られないから、半分ということだな』
と。
この授業では上記にあるように、三つの目標を示している。その「小学校でディベートの授業が指導できる力を身につける」を膨らませて、大学一回生の彼らに、教師がどうやって授業を作って行くのかということを知らせたい。
14年掛かったというと、彼らは驚いている。そりゃあ、そうだ。彼らはまだ18歳だ。そんなに長い時間を掛けるのか?と思うのも当然だろう。だが、14年で一定の決着がつけられて良かったと私は思っている。いきているうちに答えが出せない研究なんていくらでもある。で、私が彼らに伝えたかったのは、中学校3年、高校3年、大学4年と短く区切られた時間の中で答えを出す勉強を続けて行くことではなくて、仕事をするというのは長い時間を掛けて取り組むことがあるということを知ってほしいということだ。
振り返れば私の14年間なんて、あっという間だった。だが実に豊かな時間だったと思っている。
『君たちは、今までは問5の問題を解けのように、問題が提示されているものを一定の時間で解くという訓練をしてきた。だが、これからは、または社会に出てからは、問題は隠れていて、その隠れている問題を発見し、根本的な解決に向けて時間を掛けてやっていくということも大事になって行くんだな。で、これはとても大変だけど、実はとっても面白くて豊かなことなんだな』
なんてことを話していた。
さて、学生諸君にどのぐらい届いたであろうか(^^)。
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