課題の一つは、「◯◯の風景」である
9/23
後期の授業が始まった。
国語科教育法2である。
夏休みの課題の確認から授業を始める。
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課題の一つは、「◯◯の風景」である。
これは、自分の地元にある古典の世界に関わりのある場所に出向いて行って、作品に描かれている風景を写真に収めてくる宿題である。中学校の教員であったとき、総合的な学習の時間が始まる前に、始めた課題である。これを少しアレンジして大学でもやっている。
ここには、当地の京都は言うに及ばず、滋賀、奈良、大阪、兵庫などなどなどに多くの古典で描かれた世界がある。あまりにも地元過ぎて足を運んだことのないところなどに出向いて行って、その世界を見てくるという課題である。
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東京にいた時は、多摩川の近くの学校だったので
万葉仮名:多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎
よ み:多摩川(たまかは)に、さらす手作り、さらさらに、なにぞこの児の、ここだ愛(かな)しき
の歌を提示して、この歌が読まれたと思われる場所に行って写真を撮ってくるというものにした。学術的にそこだと推定されている場所でも良いし、この歌の意味を理解してその理解した世界に近い場所を探して撮影して来ても良いということにしてやらせた。
これは子どもたちの、知的好奇心を刺激した。とても面白い宿題になった。
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これの大学生バージョンである。
古典の世界を選び、その場所に行くのだ。
今年出て来たのは、
・『女殺し油の地獄』の舞台になった場所
・芭蕉が唐招提寺を訪れた時の風景
・天の香具山
・淡海の海 夕凪千鳥〜 と思われる場所
・『伊勢物語』69段 狩りの使いの斎宮の場所
・一茶が愛媛県に旅をしたときに作句した場所
・『徒然草』仁和寺にある法師の石清水八幡宮
などなど。
そして、なんと言っても
・在原業平の「世の中にたへて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」を詠んだとされる場所
などが調査報告されたのであった。面白かったなあ。
学生達は、自分のふるさとがこんなに凄い所だったのだと改めて思い直していた。
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自分の知っている土地が、自分が勉強している本に描かれている世界と繋がっていることを具体的に知るとき、なんとも言えない気持ちが生まれてくるようだ。たぶん、それは郷土愛という言葉に近いかもしれない。
私は学生達の発表を聞きながら、国褒め神事よろしく
『うーん、良い場所を選んだねえ。良い作品を選んだねえ』
と言い続ける後期の授業開きでありました。
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写真は、私が中学生に示した見本。この写真は東京の家のある聖蹟桜ヶ丘の多摩川の河原です。このイメージなんです、私は。
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