『ユーミンの罪』(酒井順子 講談社現代新書)を読んだ
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『ユーミンの罪』(酒井順子 講談社現代新書)を読んだ。
私は、ユーミンが私の青春時代にいてくれて良かったと思う一人である。しかし、なんというか、男で良かったとも思った。
この本のコピーは「ユーミンの歌とは女の業の肯定である」だ。
勿論これは立川談志の「落語は、人間の業の肯定である」を元にしている。さ、て、ではそれがどの位語られているのかを読んでみようと思った。のだが、これがかなり良い。
ファースアルバムから、バブル崩壊までのユーミンのアルバム、楽曲を社会の流れとともに追いかけながら、何が語れ歌われて来たのかを説き明かして行く。私は、同耳朶を行きていたが、新しいアルバムが出たからといってサッと買えるほどほど小遣いは豊かではなかったので、あとからあとから聴いていた。そして、バブル崩壊前にはその後追いもしなくなっていた。結果的にこの本が描いている分析の世界と合致していた。
でも、「山手のドルフィン」は、やはり私にとっても聖地の一つであり、「緩いカーブであなたに倒れてみたら、何も言わずに横顔で笑って」で、このカーブは右カーブなのか、左カーブなのかを議論し、んでもってこの車をイメージし、排気音は何かを考え、走っている場所を特定しようとした。運転手である私は助手席をイメージしてこの曲を聴いていた。
その辺りの情景が一気に吹き出してくる。
そして、その情景が何を意味しているのかを、同世代の女性が語る。ひょっとしたら、ほめ殺しかもしれない切り口で語る。なんというか、男で良かったと思った。
あの時代のシンガーソングライターを分析すると、この本のようになるのだろうか。うーん、そうは思えない。ユーミンだからこの分析が成り立つんだろうなあと思った。そして、今後、こういう分析に耐えうる息の長いシンガーソングライターは出現するのかなあとも思った。
あの時代、ユーミンにやられていた人は、読むべきである。
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