酔睡亭開店へ その7

新入生キャンプを終えて、前日を迎えた。
昨日まで東京に戻っていた奥さんと娘が帰って来た。
お土産は、暖簾である。
暖簾は、どうしても作りたかった。
発注すると結構な値段がする。
だったら自分で作れば良いと思ったのだ。
下見に行った時に、177cmが入り口の幅だとわかった。
それに合わせて生地を用意すれば良いということがわかった。
ユザワヤに出かけて行って、生地を買い込んだ。
これまでに、同じように生地を買って来て風呂敷も作っていた。
で、同じように加工をして、その加工したものを暖簾に作れば良いと思っていた。文字を書くところまでは、割と前にやっていた。
が、布がほつれないように処理するのは結構面倒臭い。
『ミシン出してくれないかなあ。処理するんだけど』
と言ったら、東京に戻っている間にやってくれるという。
す、すまん。そして、ありがとう、だ。
そこで、文字を書くところまでやった布を渡しておいたのだが、それが完成して帰って来た。
素晴らしい。
お母さんと、義母さんで作ってくれたとのこと。
二人で、呆れながら作っている姿が目に浮かんだ(^^)。
「全く何やってるんだかねえ(^^)」
という声まで聞こえた。
しかし、素晴らしいのができた。
想像している路線で、それ以上にいいのができた。
嬉しいなあ。
ありがたいなあ。
本当は、コックコートも新調しようと思っていた。店の名前「酔睡亭」を胸に刺繍して、とは思っていたのだが、時間があっという間に過ぎてしまい、刺繍の仕上がりが間に合わなくなってしまった。同じくドリンクでも、ぜひにと思って注文しようと思っていたイタリアンワインが間に合わなくなってしまった。
まあ、100%は無理。それは次回のお楽しみということで、先に進むのが賢明と判断した。
◆
店は、お昼ぐらいから下準備をするためにも空けてくれている。食材も集まっているので、下拵えをしようと思っていたら、Y君が
「先生、やっておきますよ」
と言ってくれた。
彼の出す料理は、当日に火を入れるものはない。
事前に時間をかけて作っておいたアンチョビやサーロなので事前準備はほとんどない。そこで、やってくれるというのだ。
ちょっと考えたのだが、下拵えを頼んでみた。
これで、溜まっていた大学の仕事を片付けることができる。ありがたい。午前中からお昼にかけて一気に進める。
◆
夕方からは、京都市内へ。
前日から京都入りしている後輩のご主人さんと、北野をどりに行くことになっていたのだ。上七軒まで出かけていく。なんでもこの日は第65回の北野をどりの千秋楽だとか。すごい。
京都に来てもう12年目になるが、実はなかなかこういうところに来ることはない。東京に住んでいる人が、東京タワー、六本木ヒルズ、スカイツリーに行かないのと同じだ。場所は知っているし、ビアガーデンもいいんだろうなあというのも知っているが、なかなか行かない。だが、お誘いを受けたので、これはチャンスと思い、前夜祭を兼ねて出かけて行った。
第一部 劇。第二部 踊り。第三部 フィナーレ。
とまあ書くと簡単だが、二時間ぐらいのステージは、それは面白くて美しかった。
びっくりしたのは、第一部の劇。時々、吉本の新喜劇ではないかと思うような、くっだらないギャグが入る。あの絢爛豪華な出で立ちで、吉本の新喜劇をやる。もう爆笑。第二部は、踊りのいい場面を次から次へと見せてくれる。
そして、第三部。これは、まさに絢爛豪華の一言。
総勢28人の舞妓さんに芸妓さんが舞う。歌とお三味線と太鼓の音に合わせて、艶やかに舞う。
(春の波とは、このことかもしれないなあ)
と思ってしまった。艶やかに、嫋やかに、華やかに、ああ、はんなりとかもしれない。
そんな春の波を客席で浴びることができた。
あれは、機会があったら観るべきだなあと思う。
◆
その後、一度店に顔を出して、明日はよろしくお願いいたしますと挨拶を済ませ、うなぎ懐石の夕ご飯をいただき、アルコールで喉を潤し、気合を入れての帰宅でした。
さ、いよいよ、明日、開店だ。
つづく